オッサン再起動中(まだ?)

離婚、離職、溺愛してた愛犬とも離れ、終活に悩む男の日々

マニュアル縛りで100%成功しない東京五輪

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空港で何度も迎えてくれたリオ・デ・ジャネイロ五輪のキャラクター


あれから5年が経ったけど

 (たまには日記を休んで、語りですw)
 2016年、僕はブラジルにいた。オリパラが開催されるリオ・デ・ジャネイロを中心に、ブラジルで暮らしたのだ。
 古巣となった大手広告屋でのプロジェクトで、オリパラ最新のイロハを学び、ついでに営業につながる人脈を築いてくるというのがお題だった。大事な愛犬と離れ離れになり、サンバの音楽に支配される一年を過ごした。

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2015年にポルトガル語を学び、万を辞して赴任したブラジル(当時)


 今でこそ何も無かったかのように語り継がれるリオ・デ・ジャネイロ大会だったが、開幕3ヶ月ほど前まではオリパラどころでは無かった。大統領の汚職が指摘され、弾劾騒ぎが全土に広がり、血が流れる反政府デモが毎日毎晩繰り広げられていた。当然、オリパラの準備どころでは無かったのだ。
 そのため施設の建築工事も遅れに遅れ、最終的には多くが突貫工事の仮設スタジアムとなった。今でも思うが、あちこちの客席が崩れ落ちなくて本当に良かった。

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大統領弾劾を呼びかける全土デモ(当時のリオ・デジャネイロの定宿より撮影)


 僕はリオ・デ・ジャネイロの地で、五輪、パラリンピックそれぞれの開催を準備段階から解体まで見守ったのだが、それはそれは衝撃だった。どんなに予定が遅れようが、建設中に事故が起きようが、関係者が巻き込まれる銃撃戦が起きようが、現地組織委の面々はおおらかだった。「最後にゃ何とかなるよ」が合言葉だった。ブラジル人共通の理解がそれだ。
 国が出来てから今日まで、結果あらゆることを間に合わせてきたという自負。それは、結果として仮設になろうが、どこか壊れようが、ほら間に合っただろ!なのだ。

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競技場建設前コパ・カバーナビーチの様子(当時)


 もっとも印象的だったのは全土からかき集められたボランティアの人々。誰に聞いても「研修なんて無かった」「役割から分かるだろ、と言われた」と言うのだ。事実、しっかりと研修を受けた人は選手やメディアの対応を担う僅かな人で、その他大勢は当日集合場所へ行き、持ち場を指示されて迷いながらたどり着く始末。
 これを聞いてどうだろう。日本人や、それに準じる韓国人、台湾人など東アジア、中国やロシアといった社会主義国では絶対にありえない話だろう。

 じゃぁ実際どうなったかと言えば、ここが凄い。ろくな研修は受けず、ほとんど決め事が無いような薄っぺらいマニュアルメモを手にしたボランティア達が、見事に自発的に要領を見出し、それはそれは楽しそうに活動していたのだ。
 ヘッドフォンを耳にして音楽を聴きながら施設の整備をする人、スマホで誰かと喋りながらチケットを売る人、ラジカセで大音量の音楽を流し踊りながら道案内する人。とにかく楽しそうなボランディアばかりで、観戦に訪れた人たちはオリパラパークに入る以前からボランティアと接することでお祭り気分に染まっていく。
 要するに、関係者を含めた全ての人が楽しく過ごせたのがリオ・デ・ジャネイロオリンピックだった。

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日本では不可能!誰もが笑顔になれたブラジルの五輪


 この様子を眺めながら母国日本を思い、とても悲しい気分になった。日本人に、同じことは出来ない。日本人が言うお・も・て・な・しに遊び心は一つも無い。客の側からすれば感心することはあっても楽しくなることは無い。何よりも完璧なサービスを目指し、北朝鮮の軍人かのごとくロボットのような規律を求めるのが日本人だ。
 おそらく読みきれないほど厚いマニュアルを用意し、全てを熟知させるまで何度でも研修を行ない、記載されていないことをやろうとすればパワハラはもちろん、最悪クビにしたり訴えたりするだろう。日本人のサービスというのは、やる側にすれば息苦しく窮屈な活動でしかない。

 踊りながら道案内するボランティアにつられて訪れた人々が一緒に踊り出し、道案内だったはずの場所は、まるで昼間のダンスホールのようだった。その様子を見ながら通り過ぎる人々は皆笑顔になり、歩き続ける彼らの身体は音楽に合わせて揺れていた。
 残念ながら、こんな実際を知る関係者は僕が知る限りほとんど居ない。なぜなら日本組織委やその関係者と言えば、商社や代理店らが手配した車両で競技場内に乗り付け、競技場を離れれば夜のパーティと姫ごとにのみご熱心というような日程だけを繰り返していたからだ。
 ちなみに、僕は現地組織委に頼み込んで何度かボランティアに混ぜてもらったからこそ実体験で語れる。

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ボランティア準備完了の自分、ボカしてすみません(当時)

 

すべてが無謀とも言える挑戦に

 今、日本政府や組織委、都や企業の出向者らは、イベントのプロですら経験したことのないような挑戦を強いられている。その日すら読めなくなった聖火リレーは最前線だが、実働部隊に関与する全ての人は明日も見えない毎日だろう。今、もっとも恐怖に陥っているのはチケット係だろうか。
 組織委はなぜ無観客すら言い出さなかったのだろう。すでに完売しているチケットから僅かな人のみ入場させたり、キャンセルでの払い戻しを行ったり、いずれにしても膨大な代理店作業が発生する。

 開催を前提に確保している専門業者数もまた膨大だ。道路絡みの警察警備を筆頭に、スポンサーなどの飲食や物販、競技場外整備のレンタル物、競技場内の清掃、そしてボランティア。これらの大半をキャンセルしなければならなくなる可能性があり、比例してキャンセル料リスクも大きくなる。
 スポンサーが運営するインターネットシステムすら、突然の決定や変更に耐えうるのだろうか?コロナの高齢者向けワクチン接種予約が大混乱しているように、オリパラシステムも同様にトラブル続出となるのが目に浮かぶ。日本人が設計管理するサーバイシステムほどアテにできないものはない。

 組織委や自民党政権はオリパラで来日の関係者を日本国民から遮断すると言っている。これまでの水際対策のようにザルにしかならず、あえて世の中を見ようとしない政治家の妄想でしか無い。
 少なく見積もって4万人、1万組以上の取材班の宿舎は完全にバラバラだ。彼らは、宿舎から競技場、選手村、メディアセンターを自由に動き回る。一体どうやって彼らを国民から遮断できるのだろうか?

 これも想像になるが、数えきれないほどの種類がある関係者向けのマニュアルは、毎日のように修正や追記が続いていることだろう。

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(例)日々修正・追記が続いていると思われる都のボランティア用マニュアル


 その修正や追記は閉会まで続くのではないか。手にする者はもちろん、書き手すら理解が追い書類になることだろう。何よりも日本人が愚かだと思うのは、そのマニュアルを拠り所にし、完全完璧な履行を求める部分だ。一つでもトラブルが生じた際、管理監督者は保身のためのエビデンスにそれを使う。「マニュアルに記していたのに彼らは守らなかった」などと言い続けるためだ。

 意味不明の指示書を渡されてミスを犯し、散々のパワハラを受けたあげくに犯罪者呼ばわりされて勤務を解かれるのが嫌だったら、今すぐ関係者となる予定を清く捨て去った方が良い。

リオ・デ・ジャネイロのような笑顔は決して生まれない

 僕は決して日本人が嫌いじゃない。日本は祖国だし、教育の成功もあって道徳心は高いと思っている。しかし、それも営利追求型の組織に組み込まれてしまえば一変する。役所の縦割りが酷いとは知られたことだが、最近の企業姿勢に違いを感じない。上司の言うことはどんな横暴でも是として、最後は社員を捨ててでも企業の体裁を守ろうとする傾向が顕著だからだ。世の中で何が起こっているかと思えば、組織都合のマニュアル絶対遵守の姿だ。

 今時の会社員なら、様々な誓約書にサインをさせられたことだろう。要はマニュアルを守ります、守らなければ処罰を受け入れますと宣誓させられているのだ。これと同じことが、東京オリパラでも起こっている。アレはダメ、コレもダメ。ダメダメだらけのルールの中で、人は競技に専念できるのだろうか、人は楽しく仕事できるだろうか?本当の笑顔を見ることは出来るのだろうか?

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訪れた人々を笑顔にしたはずのリオ・デ・ジャネイロ五輪(当時)


 ただでえ反開催派から白い目で見られるオリパラだ。関係者として、ボランティアとして、二度と来ない貴重な経験ができると胸高なっていた方々の心中を思うと、残念としか言いようがない。あ、数年前に遡れば、僕もその一人であった。

マニュアルの書き手だけは潤っているw

 余談になるが・・・オリパラのマニュアル。おそらく原稿作成費は一種あたり数千万円に上っている。下手したら億の単位になるかも。ただでさえ高い広告屋経由だ。毎日繰り返される修正・追記で青天井になっていることは間違いない。組織委のマニュアルに対する総支出額は最終的に数億円か?ここだけ考えても、一体何のための、誰のためのオリパラなんだと思えて仕方がない。

 

 

 ※ここで示している内容は、私個人が自由勝手に考えたイチ意見でしかないことをご了承ください

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